EXTRA MISSION

「思い出のオムライス」

あなたは、

かの女性が待つ部屋のドアの前にいた。

お忍びで来たと言ってはいたが、

 

彼女の正体にはとうに気づいていた。

 

65年前、あの人もこうして彼女の部屋に

 

オムライスを運んだのだろうか。

 

そんなことを考えていたら、

 

彼女の声がドア越しに聞こえてきた。

 

「ドアは開いてるわ。お入りなさい」

「失礼します」

 

「ノックは無用と言ったわよ」

 

「大変お待たせしました、『思い出の

 

オムライス』をお持ちしました」

「そう。――早速いただいてもいいかしら」

 

「はい、ぜひ冷めないうちに。

 

では私はこれで」

 

「いえ、ここにいて頂戴」

 

そういうと、彼女は目の前に置かれた

 

オムライスを丹念に眺めた後、

 

まずはソースをつけずにそのまま一口。

 

そして次にデミグラスソースを少し取って

 

オムライスとともにもう一口。

 

スプーンを扱うその手付きは大変優雅で、

 

一連の所作はさながら映画の

 

ワンシーンを切り取ったかのようだった。

「ねえ、あなた」

 

彼女のその言葉で我に返る。

 

「は、はい」

 

「本当にありがとう。私は、このオムライスを

 

また食べることができて本当に嬉しいわ」

 

「ありがとうございます」

 

「でも一つだけ。

 

65年前のあのオムライスよりも」

…まさか、なにか駄目だったのだろうか。

 

しかし彼女は、少しだけ微笑んで続けた。

 

「ちょっとだけ、熱かったわ」

「それは、その」

 

私は逆に真顔に戻ってこう答えた。

 

​「――お熱いのがお好きかと思ったので」

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